S&P Global Mobilityのプレスリリース
東京、2025年3月12日-日本の2024年のライトビークル車両販売台数は、前年比7.9%減の434万台でした。過去10年間に自動車業界が、安全性や排出ガスに関する規制、パンデミックの影響、半導体不足、各地の地政学的な緊張の高まりなど数多くの問題に直面する中、日本は車両販売の主要市場として引き続き世界の自動車業界を牽引しています。S&P Global Mobilityでは、2025年の日本のライトビークル車両販売台数を、地政学的不確実性やサプライチェーン関連の課題からの影響を織り込み、456万台と予測します。
2025年には短期的な販売回復が期待される
日本のライトビークル新車販売については、型式認証手続きや安全性能試験で不正が行われたことによる納品の遅延と、2024年1月に発生した能登半島地震の影響など、2024年はOEMにとって厳しい年となり販売が低迷したものの、2025年には短期的に回復することが見込まれます。一方で、少子高齢化を始めとする人口動態の長期的な構造的課題が日本の経済成長全体を押し下げ、国内のライトビークル車両販売は緩やかな下降傾向をたどると考えられます。高齢者が車を手放す一方、若者は都市部に住み、車を所有せず公共交通機関を利用する傾向が一般化している現状を受け、S&P Global Mobilityは現時点での予測をもとに、日本国内のライトビークル車両販売台数が2030年には430万台まで減少すると予想します。
また、S&P Global Mobilityの予測では、電気自動車(EV)の人気が徐々に高まり、日本で販売されるバッテリー電気自動車(BEV)のシェアが2030年までに10%を超えることが見込まれます。
S&P Global Mobility日本・韓国ビークル・セールスフォーキャスト アソシエイトダイレクター川野義昭は、「とはいえ、需要と人気の高さから、ハイブリッド電気自動車(HEV)は今でも多くの消費者に選ばれており、今後も国内市場でその傾向は続くでしょう」と述べています。
米国の関税が10%なら輸出は堅調に推移
日本は今年も自動車生産の主要プレーヤーとしての地位を維持するとみられ、S&P Global Mobilityの予測では、国内の2025年のライトビークル生産台数を790万台と試算しています。米国の関税の影響を受けない国々への日本車輸出は安定して推移する見込みです。加えて、EVの需要が減少し、内燃機関搭載車の人気が高まっていることや、日本のOEMからのハイブリッドパワートレインの需要が増加していることなどを背景に、日本のOEMに米国市場での成長機会がもたらされています。
S&P Global Mobilityライトビークル生産予測 ダイレクター西本真敏はこれに対し、「しかし、米国が日本に対して25%の自動車関税を課せば、日本の輸出は大きな影響を受けることになります」と見解を示しました。
さらに、グローバルな経済圏の進化に伴い、主にメキシコと中国にある日本のサプライチェーンが再編を迫られる可能性もあります。
高まる世界的な不確実性と先行き不透明な貿易構造
S&P Global Mobilityでは、米国におけるライトビークルやその他の消費財の輸入に対する関税を取り巻く状況や、中国からの輸入に関する欧州の関税ガイドラインを念頭に、2025年の自動車業界の世界的な見通しについて慎重な見方を維持しています。現時点での予測をもとに、今年のライトビークル車両の世界販売台数は8,970万台に達することが見込まれますが、現在の厳しい環境に対する自動車業界の対応次第で、この試算は調整される可能性があります。
S&P Global Mobility予測戦略担当バイスプレジデント マイケル・ロビネットは、「米国が関税の脅威を利用して世界との貿易構造を再構築する中、自動車業界全体の不確実な状況は2025年も続くと思われます。自動車産業がこの戦略の中心となるでしょう」と述べています。
トランプ政権は、3月12日に鉄鋼とアルミニウムの輸入に対して世界的に25%の関税を発動する予定で、すでに3月4日にカナダとメキシコからのUSMCA非準拠車両(一部の限られた車両)に対して25%の関税を課しています。次の鍵となる4月2日には、生産国を問わず、すべての車両および部品の輸入に対して25%の関税が課される見込みです。
米国政府は、関税だけでなく、輸入に関する法律や付加価値税(VAT)の扱いなどの非関税障壁も含め、米国への自動車輸入に対して対等な条件や待遇を求めています。米国で販売される車両の約45%が関税の影響を受けると予想され、関税をめぐる交渉は2025年の秋頃まで続く可能性がありますが、その間も関税の脅威や障壁は続く見通しです。
S&P Global Mobilityについて
S&P Global Mobilityは、比類のない自動車データから導き出される有益なインサイトを通じて、変化の予測や確信のある意思決定を支援するとともに、専門知識を活用することで、お客様がビジネスを最適化し、適切な消費者にリーチし、モビリティの未来を創造するお手伝いをしています。私たちは、自動車のイノベーションの扉を開き、今日の購買パターンを明らかにするだけでなく、お客様が未来のテクノロジーに備えるための計画を策定できるようサポートいたします。
S&P Global Mobilityは、S&P Global(NYSE: SPGI)の一部門です。S&P Globalは、世界の資本市場、コモディティ市場、自動車市場において、信用格付け、ベンチマーク、分析、ワークフローのソリューションを提供する世界有数の企業です。私たちは、さまざまなサービスを通じて世界の主要企業が経済環境に適応し、未来を見据えた計画を構築できるよう支援しています。詳細はこちらをご覧ください。