環境省・奄美市・岡山理科大学などと協力し、絶滅危惧種 アマミノクロウサギを守る試験走行開始
日産自動車株式会社 のプレスリリース
日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区)は、3月3日「世界野生生物の日」に合わせて、歩行者にクルマの接近を知らせる電気自動車の車両接近通報装置の仕組みから着想し、動物に合わせた周波数を発する装置を導入することで、クルマと野生生物の接触事故(ロードキル)ゼロを目指す「NISSAN ANIMALERT PROJECT(日産アニマラートプロジェクト)」を開始します。
本プロジェクトの第1弾では、日産自動車、奄美市、環境省、岡山理科大学、T.M.WORKSら7団体が連携し、産官学一丸となって鹿児島県奄美大島と徳之島にのみ生息する日本固有種で、絶滅危惧ⅠB類(近い将来に絶滅の危険性が高い種)に指定されているアマミノクロウサギの保護を目指します。
この度、実証実験の開始に伴い、プロジェクトムービーとインタビュームービーを、日産自動車公式YouTubeチャンネルおよび公式SNSにて公開いたします。
※ANIMALERTは、ANIMAL(アニマル)とALERT(アラート)から作られた造語です。
【日産自動車公式YouTubeチャンネル】 https://youtu.be/FssabDYu2b4
【オフィシャル素材ダウンロードリンク】 https://bit.ly/4gQQOs8 pass: animalert
《プロジェクト発足背景》
2021年7月に世界自然遺産に登録された奄美大島では、クルマと動物の接触事故「ロードキル」が深刻な課題となっています。環境省の調査(※1)によると、アマミノクロウサギのロードキル件数は7年連続で増加し、2023年には過去最多の147件を記録しました。
これまで日産自動車は、クルマに乗る前にボンネットなどを叩いて、エンジンルームやタイヤの隙間などに潜む猫を保護する「#猫バンバン」や、獣医師会と協力し、災害時・停電が発生した際に「日産リーフ」を動物病院に無償で提供する取り組みなど、動物愛護に関する活動を積極的に行ってきました。今回のプロジェクトは、歩行者にクルマの接近を知らせる《接近通報音》技術に着目し、野生生物にもクルマの接近を知らせ、事故の防止に繋げることを目指して立ち上げられました。
日産は2010年12月、世界初のEV量産車「日産リーフ」に接近通報音を標準装備し、その後の国際規則制定にも貢献してきました。その技術を生かし、動物を保護する音にも取り組めないかと考え、今回のプロジェクトを開始しました。このプロジェクトを通じて、増加するアマミノクロウサギのロードキル件数の抑制を目指し、将来的には全国各地で発生している野生生物のロードキル問題の解決にも貢献していきたいと考えています。
(※1:https://kyushu.env.go.jp/blog/page_00416.html)
《「NISSAN ANIMALERT」プロジェクト化に向けたこれまでの動き》
・全国で起きているロードキルの実態把握
国土交通省によると2022年度には直轄国道で7万件、高速道路では5.1万件のロードキルが発生。イヌ、ネコ、タヌキ、鳥類、シカなど、さまざまな種類の動物がロードキルに遭う状況が続いています。国土の約7割を森林が占める日本において、各地域に生息する野生生物とクルマとの共存は重要なテーマのひとつです。
※2:直轄国道(p.1内「落下物処理の実施状況(令和4年度)」の項目より)
https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/ijikanri/pdf/rakkabutu.pdf
※3:高速道路(p.1内「高速道路会社の落下物処理件数(令和4年度)」の項目より)
https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/ijikanri/pdf/rakkabutu_nexco.pdf
・日産テクニカルセンターでの高周波音特性の分析、奄美現地での設置型実験
奄美大島現地での走行実験に先駆けて、高周波音の特性分析を日産テクニカルセンターで実施。日産EVにテストデバイス*4を装着した状態で、必要な周波数特性や音圧レベルを満たすか等の事前分析を実施しました。また、アマミノクロウサギの出現が確認されているスポットにテストデバイスの設置を行い、複数の周波数パターンから有効なものを絞り込む設置型実験も実施しました。
※4:鹿向けのデバイス『鹿ソニック』 をベースに実証実験用の機能を追加
・実証実験車(日産サクラ)による、奄美大島での走行実験
2024年12月より、テストデバイスを搭載した日産サクラによる走行実験を奄美大島にてスタートしました。森林地域内の市道スタル俣(利用規制道路)にて、アマミノクロウサギの出現する夜間に時速10kmで走行を行い、高周波音の有無での挙動データを収集。実証実験段階ではありますが、高周波音のスイッチを入れた途端にアマミノクロウサギが逃げ出すという動作が確認できています。実験より得られたデータをもとに、通常速度での走行実験をはじめ今後プロジェクトの活動をさらに深めていく予定です。
※本実証実験は、野生動物およびロードキル対策の専門家の監修・立ち会いのもと、周辺環境への適切な配慮を行いながら実施しています。
《「NISSAN ANIMALERT」プロジェクトムービーを公開》
アマミノクロウサギが視聴者にロードキルが増えていることを語りかけるシーンからスタートします。その後、日産自動車がこのプロジェクトを始めた意義や、技術を紹介しています。最後に今回のプロジェクトにかける意気込みを紹介しています。
ナレーターには、東京と奄美大島の2拠点生活を行っているIMALU氏にご参加いただきました。
・ナレーターの紹介
IMALU
1989年9月19日生まれ。映画や音楽好きで知られており、イベントや配信ライブなどではMCやゲストとして参加するなどマルチに活動中。2022年8月からは東京と奄美大島での2拠点生活を開始。また、保護犬猫シェルターに足を運び、ボランティアで保護活動にも参加している
賛同コメント:
「奄美」と「動物」が大好きな私にとって、こんな素敵なプロジェクトに携わることができ、大変嬉しく思っております!これから沢山の動物の命が救われますように。そして奄美の美しい豊かな自然がずっと続きますように・・・
《プロジェクト参加・協力団体と役割》
・日産自動車:プロジェクト企画、実験車両提供、高周波音特性の共同分析、公道走行時の保安基準に適合したデバイス設置位置検証、実験計画策定/実施サポート 等
・鹿児島県 奄美市役所:実証実験場所の提供/交渉/許認可調整、車両管理、実証実験実施サポート 等
・岡山理科大学、T.M WORKS:テストデバイス提供、実験計画策定、実証実験マネジメント、データ解析 等
・日本大学、帯広畜産大学:データ解析支援 等
・環境省 奄美群島国立公園管理事務所:アマミノクロウサギ及びそのロードキル実態に関する知見提供、実験計画への助言/実施サポート、森林地域内の道路を利用する上での手続き等のサポート 等
《プロジェクト関係者コメント ※インタビューより一部抜粋》
<日産自動車 ブランド&メディア戦略部 地元 亜由子氏>
「ANIMALERT(アニマラート)」というのは、「アニマル」と「アラート」を組み合わせた造語です。日産自動車はこれまで、電気自動車の接近通報音の技術を開発してきました。その経験を活かし、人を守る音だけではなく、動物を守る音にも取り組もうというのが今回のコンセプトです。
ロードキルは奄美だけの問題ではなく、日本全国で発生しています。事故に遭えば動物だけでなく、ドライバーにも心身ともに大きなダメージを与える可能性があります。日産自動車は全社ビジョンとして「ゼロエミッション(排気ガスゼロ)」と「ゼロフェイタリティ(死亡事故ゼロ)」を掲げています。人間の事故防止だけではなくて、野生生物の交通事故ゼロも目指したいと考えています。
<日産自動車 音振性能実験グループ 古宮 亜友美氏>
これまで私たち音振開発グループでは、車両スピーカーから音を発してクルマの存在を歩行者に知らせる技術開発に取り組んできました。今回のプロジェクトでは、アマミノクロウサギへの効果と最適な周波数を特定するため、実証実験を専門の先生方と取り組むことになりました。
最も苦労したのは、デバイスの取り付け位置の特定です。普段は私たちが扱う人間の可聴域と異なり、動物は非常に高い周波数の音を聞き取ります。そのため、高周波数域の直進性であるとか、回折性、減衰特性を理解することに大変苦労しました。今後、実験で効果が確認できれば、より実用的で効果の高い技術へと発展させていけると考えています。
<鹿児島県奄美市役所 市民環境部世界自然遺産課 自然環境係 星野 蒼一郎氏>
今まで市としてロードキルの対策を行ってきましたが、それは人に対して行うものでした。今回の「NISSAN ANIMALERT」プロジェクトは動物に対して啓発をする、そもそもロードキルが起こらないようにするという、全く新しい視点での取り組みだと思います。
電気自動車に音波装置を付けるということですが、実際に林道で走行してみるとほとんど音が聞こえない、そうした環境に配慮した取り組みですので、私たちも非常に期待しているところです。プロジェクトの成功に向けて動き出すことは、2050年度までに市内の二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を宣言した奄美市にとって、とても有意義な一歩になると思っております。
<岡山理科大学 研究社会連携機構 特担教授 辻 維周氏>
(既に開始している実証実験について) 設置型実験を行った場所は、アマミノクロウサギのフンが多数あるところだったのですが、設置した後にはアマミノクロウサギの姿が照射範囲内ではカメラに映らなくなりました。ということは、彼らの出現を抑止できている、というふうに考えています。また車載実験のテストでも、スイッチを入れた途端にアマミノクロウサギが逃げ出すという動作がありました。これはうまくいくのではないかと思っています。プロジェクトの目標として、アマミノクロウサギのロードキルを限りなく0に減らしていきたいと思っています。
<環境省 奄美群島国立公園管理事務所 希少種保護増殖等専門員 鈴木 真理子氏>
アマミノクロウサギは大体、奄美大島で2万頭ぐらいいると推定されています。生息地も徐々に回復し、今まで出てこなかった場所や集落の近くにも現れるようになってきていて、これまで意識していなかった場所でも出てくるために事故が増えているのだと思います。
島の人だけではなく、島外に住まわれている方がこの野生生物の交通事故に興味関心を持っているということが島の人にとってもすごく大きなインパクトがあると感じています。島に来られる観光客の方への普及啓発にもなると考えていますので、そういった意識を変えるという意味でも期待をしています。
■日産EVについて:日産自動車の電気自動車(EV)ラインアップ
現在、乗用車では「日産サクラ」、「日産リーフ」、「日産アリア」の3台のEVをラインアップし、累計で約26万台の電気自動車を日本国内で販売しております。(2024年3月調べ)
「日産サクラ」は、100%電気で走る軽の電気自動車で、2024年日本で最も選ばれたEV(販売台数No.1)です。軽自動車ならではの小回り性能に加え、「日産リーフ」の開発で培った技術をフル投入した電気自動車ならではの静粛性や力強くなめらかな加速を提供します。また、通勤や買い物など、日常のドライブに十分な航続距離、上質で洗練されたデザインと広々とした室内空間、そして「プロパイロット」や「プロパイロット パーキング」などの先進技術が、生活に寄り添いながらも運転する楽しみをもたらし、日々の生活にワクワク感をお届けします。
「日産リーフ」は、2010年12月に世界初の量産型電気自動車として発売しました。発売以来、走行性能の向上や、航続距離を延長するなど、幅広いニーズを満たすクルマとして10年以上にわたり進化を続け、初代から累計約18万台を販売しています。(2024年3月調べ)
「日産アリア」は、日産が培ってきた電気自動車のノウハウと、最新のコネクテッド技術を融合させたスタイリッシュで革新的なクロスオーバーEVです。EVならではの力強い加速、滑らかな走り、静粛性に磨きをかけ、日本の伝統美を生かした、シンプルでありながら力強い美しさのあるデザインも好評いただいております。