自然エネルギー財団のプレスリリース
シナリオ本編▶
脱炭素へのエネルギー転換シナリオ 2035年自然エネルギー電力80%を軸に
関連シンポジウム▶
脱炭素へのエネルギー転換シナリオを考える:エネルギー基本計画は何をめざすべきか
2024年6月21日(金)15:00- 虎ノ門ヒルズフォーラム および オンライン
新しいエネルギー基本計画の検討が来年早々の策定を目標に行われています。財団の提案するシナリオは、日本国内に鉄鋼などの製造業を維持し、また、データセンターや半導体工場などの新しい産業を誘致しながら、IPCCが求める1.5℃シナリオ、すなわち2019年比2035年までにCO2排出を65%以上削減するための方策を示したものです。
脱炭素とエネルギー安全保障の両立には、原子力発電やCCS付き火力発電などが必要だという議論がありますが、財団のシナリオは、太陽光発電、風力発電、蓄電池を大量に導入し、送電網整備を増強・前倒しすることによって、原発などに依存することなく、大幅なCO2排出削減を電力コストを抑えつつ実現する可能性を示しています。
このシナリオが、エネルギー基本計画の議論、更には2035年までの新たなNDC策定の議論に貢献できることを期待しています。
※本報告書の関連資料・データについては、近日中に公表する詳細版に掲載しています。
主な内容
1. 電力脱炭素化+鉄鋼生産などの戦略的電化+積極的効率化で、国内の産業基盤を維持しながら、2035年にCO2の66%削減(2019年比)が可能であることを示した。自然エネルギーの大量供給で、
1) 鉄鋼生産も含め製造業を脱炭素化し、国際競争力を維持する。
2) GAFAMなどが要件とする自然エネルギーを利用可能にし、データセンター・半導体工場などの国内への立地を促進。
3) 洋上風力発電、送電網整備の加速で、鉄鋼を含む新たな需要を創出。
2. 自然エネルギー80%で、原子力発電と石炭火力なしでも、電力の安定供給が可能であることを示した。 太陽光発電と風力発電が50%を供給し、他の自然エネ電源+蓄電池・揚水発電で、24時間365日、電力の安定供給が可能であることをシミュレーションで示した(需給シミュレーションは、電力広域的運営推進機関がマスタープラン策定に用いたPROMODで実施)。
3. 自然エネルギー80%でも、2035年の発電コストは11.2円/kWhでウクライナ侵攻前と同レベルの水準となる。太陽光発電、風力発電、蓄電池の大幅導入を前提とする2035年の発電コストは11.2円/kWhと推計。ウクライナ侵攻前の11.9円/kWhよりも若干低い水準との推計となった。送電線増強コストを加えても同額程度。
4. 海外からの化石燃料輸入への依存を大幅に低減し、エネルギー安全保障を向上。2050年に向けて、国内でのグリーン水素製造の可能性も示した。 ウクライナ侵攻後のような化石燃料高騰があっても、発電コストの上昇は限定的(kWhあたりの発電コスト上昇が、2023年度の電力供給構造であれば4.6~6.5円の上昇をもたらしたが、自然エネルギー80%では1.2~2.5円の上昇へ縮小する)。
5. 脱炭素+低コスト+安定供給実現のカギは、太陽光発電、風力発電、蓄電池の大量導入と送電網増強。現時点からの取組み加速が必要であることを示した。 自然エネルギー発電設備は、現在の3.3倍化、蓄電設備は72GW/184GWh導入する。北海道・東北・東京間の連系線の整備を現在の広域系統整備計画よりも前倒しし、8GW-12GWへ増強。
目次
はじめに
要約
1. 世界で広がる電力イノベーション
2. 2035年度CO2 65%減
コラム:AI普及によって電力需要は増えるが同時に効率化、データセンター/半導体工場誘致には自然エネルギーが必須
コラム:国産エネルギーは最大のエネルギー安全保障
コラム:蓄電池がゲームを変えつつある
コラム:持続可能なバイオエネルギーの活用に向けて
3. 提言:日本企業が世界で選ばれ、日本が脱炭素技術で儲かる国になるためには何が必要か?
4. どんな世界になっているのだろうか?ある女性の日常
関連シンポジウム 「脱炭素へのエネルギー転換シナリオを考える: エネルギー基本計画は何をめざすべきか 」
参加登録はこちらから▶ 会場来場 または オンライン
[日時]2024年6月21日(金)
【シンポジウム】15:00-17:30
【ネットワーキング】プログラム終了後、会場来場者対象。
[主催]公益財団法人 自然エネルギー財団
[開催形式] 会場来場(虎ノ門ヒルズフォーラム)および、オンライン(Zoomウェビナー)
[参加費・参加登録]無料・要事前登録
[プログラム] *6月19日現在。プログラムや登壇者は予告なく変更する場合があります。日英同時通訳あり
開会あいさつ 大野 輝之 自然エネルギー財団 常務理事
特別講演 「2030年自然エネルギー3倍化への進展」
パオロ・フランクル 国際エネルギー機関 再生可能エネルギー部門 責任者
報告 「脱炭素への2035年エネルギー転換シナリオ」
高瀬 香絵 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(気候変動)
討論1 「自然エネルギー3倍化の意義と可能性」
パオロ・フランクル 国際エネルギー機関 再生可能エネルギー部門 責任者
ブルース・ダグラス グローバル・リニューアブルズ・アライアンス(GRA) CEO
木村 誠一郎 自然エネルギー財団 主席研究員
[モデレーター] トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長
討論2 「ビジネスは自然エネルギーを求める」
阿部 哲嗣 リコー ESG戦略部 ESGセンター 所長
磯野 久美子 自然電力 取締役
豊田 祐介 デジタルグリッド 代表取締役社長
加藤 茂夫 気候変動イニシアティブ(JCI)共同代表
高瀬 香絵 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(気候変動)
[モデレーター] 石田 雅也 自然エネルギー財団 研究局長
閉会あいさつ 大林 ミカ 自然エネルギー財団 事業局長
※会場参加の方には、シンポジウム終了後、ネットワーキングの場があります。