12チャンネル3次元音響センサアレイによる非定常騒音の時空間可視化技術を開発

岐阜大学のプレスリリース

12チャンネル3次元音響センサアレイによる非定常騒音の時空間可視化技術を開発 車載可能な計測システムを開発、自動車騒音の新たな解析基盤に―

 
 

本研究のポイント

・ 世界で初めて、12チャンネルの3次元音響ベクトルセンサアレイと同期信号ジェネレータを一体化した、同時・多点・同期型の音響計測システムを構築しました。
・ 従来計測困難であった、非定常な音響エネルギーの放射・伝播挙動を、実空間の画像上に直接可視化し、定量的に解析できるようになりました。
・ 装置を可搬・車載可能なサイズとすることで、実験室のみならず、実際の車両環境での計測を可能にしました。
・ 岐阜大学の学生が中心となり、空調ダクトの形状差によって生じる空気の流れのはく離と騒音発生の因果関係を、騒音解析を通じて定量的に実証しました。
・ 本システムは、自動車の静粛性向上に向けた現象解明や、デバッグ作業の効率化を支援する新たな解析基盤として活用が期待されます。
開発した計測装置 と 車内空調ダクトから発生する音の可視化結果
 
 

研究概要

 岐阜大学 自然科学技術研究科修士1年の竹原大翔さんと工学部機械システム工学科の寺島修教授らの研究グループは、ダイハツ工業株式会社との共同研究で、広域かつ複雑な音響現象を解明するための「マルチフィジックス同時計測・可視化システム」を構築しました。
 自動車の電動化が進む中、車室内外の微小な非定常騒音(風切り音や動作音など時間とともに特性が変化する音=非定常音響現象)の低減が急務となっています。こうした騒音は空気の流れ(流体)・構造・音響が複雑に絡み合うため、従来の計測手法では発生要因の特定が困難でした。
 本研究では、12個の3次元音響ベクトルセンサを格子状に配置した独自のアレイシステムを開発し、音響・流速・振動データを20マイクロ秒以内で同期取得する計測基盤を確立しました。
 本研究成果は、2026年5月27日に自動車技術会 春季大会にて発表されました。
 
 

研究背景

 近年、自動車の静粛性向上により、これまでは目立たなかった低音圧・非定常な音が知覚されやすくなっています 。これらは流体・構造・音響が複雑に影響しあう「マルチフィジックス連成現象」としてとらえられますが、広域かつ複雑な音場を同一時刻・同一座標で多点同期計測できる技術が求められていました。
 
 

研究成果

 本研究の核となる12チャンネルの3次元音響ベクトルセンサアレイ(12-CH 3D-AVSアレイ)は、車載可能なコンパクトさを持ちながら、音圧と3軸方向の音響粒子速度を同時に計測できます。さらに、同期信号ジェネレータを導入することで、異なるデータ収集システム間での高度な時間同期を実現しました。
 このシステムを実機の空調ダクト騒音評価に適用した結果、ダクト曲がり部の形状差(曲率差)が空気の流れのはく離に及ぼす影響と、それが騒音放射を引き起こすプロセスを、実画像に重ねたベクトル図として可視化することに成功しました。
 
 

今後の展開

 今後は、走行中の車室内外計測への展開を図り、自動車開発におけるデバッグ作業のさらなる効率化と、より快適な移動空間の実現に寄与していきます。
 
 

研究者コメント

 本システムは、現場のニーズに応える実用的な計測基盤として構築しました。特に、多地点の同期演算や流体音の因果関係抽出において、本学学生の竹原大翔さんが粘り強く解析に取り組み、システムの有効性を実証しました。若い力によるこの成果が、次世代モビリティの開発を加速させることを期待しています。
 
 

用語解説

音響粒子速度
音波によって生じる空気粒子の振動速度。反射の影響を受けにくく、音源探査に有効です。
非定常音響現象
時間とともに特性が変化する音。風切り音や動作音などが含まれます。
 
 

論文情報

雑誌名:自動車技術会2026年春季大会 学術講演会 講演予稿集
論文タイトル:広域・非定常音響現象のためのマルチフィジックス同時計測・可視化システムの構築
著者:伴武郎, 古澤悠人, 寺島修, 牧野斗哉, 竹原大翔
ISSN: 2435-9742
 
 

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