~商品開発の上流で組み立て品質の分析が可能、自動車の設計・製造コスト最適化を実現~
株式会社JSOLのプレスリリース
株式会社JSOL(以下、JSOL)は2026年5月11日、国内有数の輸送機器メーカーの技術提供を受けた新たなCAEツール※1「JWELD CpAnalyzer」の提供を開始しました。これは、「スポット溶接専用固有ひずみ法※2」(特許第6985689号)を活用して自動車組み立てに伴う単品部品の寸法ばらつき影響を分析し、組み立て品質を高めるために最も重要な管理ポイントを可視化する、世界初※3のCAEツールです。
自動車組み立てにおいて、部品の「どの部分」を「どれくらいの寸法精度」で担保すべきか把握することは、設計・製造コストを効率化・最適化するために重要です。JWELD CpAnalyzerを利用することで、商品開発の上流の設計段階で、組み立て品の最重要管理ポイントを数値データで可視化し、寸法ばらつきを加味した品質を分析できるようになります。これにより、自動車組み立て企業の設計部門と製造部門で、部品の最も重要な管理ポイントを事前に把握し、全体の製造コストを最小化する最良の手段を商品開発の上流で検討できるようになります。
※1 Computer Aided Engineeringの略で、製品を実際に試作する前に、強度、変形や熱影響をコンピューター上で解析・評価するシミュレーションソフト
※2 スポット溶接後の組立構造の変形を予測する解析手法
※3 「スポット溶接専用固有ひずみ法※2」(特許第6985689号)を用いたCAEツールとして世界初(JSOL調べ)
【背景】
<自動車産業の置かれる現状>
近年、バッテリー電気自動車をはじめとする自動車開発競争は激しさを増しており、国内自動車産業の競争力強化が求められています。中でも、一車種の開発にかかるリードタイムの短縮は、より効率的かつ効果的、そしてタイムリーに市場ニーズを開発に反映させ、競争力のある製品を生み出すことにつながるため、極めて重要です。
<リードタイムを短縮する上での課題>
リードタイム短縮を実現するためには、商品開発における設計段階において、製造工程の影響を事前に評価する取り組みが不可欠です。特に自動車組み立てに多用される溶接は、部品個々に寸法ばらつきの影響を受けやすく、最終的な製造品質に大きく影響します。そのため、寸法ばらつきによる溶接後の影響を設計段階で事前評価することが、手戻りの削減やリードタイムの短縮に効果的です。
しかし、溶接は複雑な物理現象を伴うため、高精度なシミュレーションを短時間で行うことが難しく、設計に生かしきれない実情がありました。その結果、生産現場では寸法ばらつきによる寸法精度の不足等、品質課題が生じ、設計への手戻りや金型の修正、治具・打点位置変更による現場対応など、リードタイム短縮の阻害要因となっているのが現状です。
<従来の対処方法と問題点>
従来の商品開発の流れの中では、一つの製品をいくつか製作し、実際に計測することで、寸法ばらつき影響を評価していましたが、製作後に評価するため、設計図の大枠が決まった段階で寸法精度の不足が判明することがありました。しかし、ばらつきによる寸法精度の問題が判明した場合でも、実際に製作する段階となっては、大幅な設計図の変更を行うことは難しいため、生産現場での対応(治具や溶接打点の位置変更、追加など)が余儀なくされ、予測できない現場対応による開発期間の長期化や製造コストの増加が発生していました。
【JWELD CpAnalyzerで実現する設計改革】
<組み立て品質を決める最重要管理ポイントの事前把握>
組み立て後の寸法精度に寸法ばらつきが与える影響を分析し、効果的・効率的に対処するためには、商品開発の上流において対策することが重要です。生産現場では気温などの環境変化や材料ロットの違いなど、さまざまな要因で寸法ばらつきが発生しうるため、制御が難しく、生産計画の遅延に直結しうる現場での対応は最小限にすべきです。寸法ばらつきが寸法精度に与える影響のうち、最重要となる管理ポイントを予測・可視化できれば、そのポイントの寸法精度を担保するために何が出来るか、検討することが可能となります。さらに、商品開発の上流においては柔軟な対策が可能です。例えば、設計図の変更や、溶接担当部門だけでなく他部門との調整による解決も選択肢となります。
<組み立て工程の前倒し設計>
自動車業界における商品開発の流れには、1.企画 2.基本設計 3.形状設計 4.生産設計 5.生産準備という大きく五つのフェーズがあります。寸法ばらつきへの対策を設計図に反映する、あるいは他部門と調整し全体を最適化するためには、生産フェーズの4または5ではなく、設計フェーズにおける3での検討が必須です。これまで、一つの部品を製造するプレス工程(金属の板を押し、自動車部品の形を製造する工程)では、3とともに前倒しで生産設計の検討を開始する企業もあります。JWELD CpAnalyzerを活用することで、一つ一つの部品を組み立てる溶接工程についても、プレス工程と同様に、前倒しでの生産設計が可能となります。JWELD CpAnalyzerは、どの部品のどの箇所で、どの程度の寸法ばらつき影響なのかを分析し、最重要管理ポイントを可視化するため、開発者および設計者は、組み立て工程における問題の特定と分析が可能となります。柔軟に対策を打てる設計段階で解決策を検討することで、設計への手戻りや予期せぬ現場対応を削減しつつ、設計・製造コストの全体最適化を目指すことが可能となります。
【JWELD CpAnalyzerの特長】
JWELD CpAnalyzerに活用した「スポット溶接専用固有ひずみ法」とは、溶接による変形や寸法精度の評価に特化したシミュレーション手法です。「JWELD」に搭載されたJSOL独自の手法で、多工程にわたる自動車の溶接組立工程における変形を、短時間で予測することができます。
JWELD CpAnalyzerは、このJWELDの高速計算技術に、国内有数の輸送機器メーカーから提供を受けた特許・ノウハウを組み合わせたものです。人工的に生成した寸法ばらつきを反映した組立形状を予測し、その大量の計算データをもとに統計的な評価を行うことで、寸法ばらつきを加味した組み立て品質を試作無しで予測可能となりました。また、専用設計された結果表示画面により、最重要管理ポイントの可視化のみならず、組み立て時の溶接打点が最重要管理ポイントに与える相関関係を可視化することで、組み立て工程のどのタイミングでどの箇所の溶接が最重要管理ポイントに大きな影響を与えるかといった分析が可能です。自動車組み立て企業は、JWELD CpAnalyzerを活用することで、試作の製作を行うことなく、組み立て品の最重要管理ポイントをデジタルで可視化、溶接工程や溶接打点の寸法ばらつき影響を分析することで、形状設計や工程設計における組み立て品質の向上につなげられます。
【今後の展開】
JSOLはこれまで、衝突安全、プレス、溶接など、さまざまな設計工程に対するシミュレーションツールを販売し、自動車業界をはじめとした製造業を支援してきました。これまで培ってきたシミュレーション技術を生かし、今後はJWELD CpAnalyzerをスポット溶接以外の工程などへ転用することで、より多くの業界で商品設計に役立ていただけるよう、開発を進めていきます。
※本リリースに記載されている内容は予告無く変更することがあります。
※JWELDは日本における登録商標です。