Rolls-Royce Motor Cars Limitedのプレスリリース

2026年3月2日(月) 、グッドウッド、ウエスト・サセックス
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誕生から10周年を迎えたロールス・ロイス・ブラック・バッジ(Black Badge)
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ブラック・バッジは、現代のラグジュアリーカー市場に革新的な価値観を示し、業界全体に影響を与える
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1928年型20 H.P.のブラック・グリルとスピリット・オブ・エクスタシーは、ブラック・バッジ初期の美学の先例
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ジョン・レノン所有の1964年型オール・ブラック仕様のファントムV に遡るブラック・バッジの精神とアティチュード
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現行ブラック・バッジのラインナップでは、スペクター、ゴースト、カリナンを展開
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ブラック・バッジは、ゲーム、スニーカー、ストリートアートなどにおけるビスポーク・コミッションにインスピレーションを与える
「ブラック・バッジは当初から、成功を誇り高く、確固たる信念をもって表現する新たな世代のお客様をロールス・ロイスに迎え入れるためにつくられました。ロールス・ロイスならではの細やかさと精緻さをもってお客様に応えてきたことで、これまでロールス・ロイスを検討したことのない多くの方々にとっても、ブランドをより魅力ある存在へと位置付けることにつながりました。これにより、ブラック・バッジ導入から10年間にわたり、ロールス・ロイス・モーター・カーズは着実かつ持続的な成長を遂げてきました。ブラック・バッジの成功は当社の業績にとどまらず、ラグジュアリー業界全体に響き渡る美学と体験価値の新たな基準を確立しました。今後もブラック・バッジのさらなる進化を推進していくことに、大きな期待を抱いています」
クリス・ブラウンリッジ、ロールス・ロイス・モーター・カーズ最高経営責任者
ロールス・ロイスは、その創業当初から、優雅さ、職人技、卓越したエンジニアリングだけでなく、個性、反骨精神、そして既成概念にとらわれない姿勢によっても定義されてきました。この大胆不敵なスピリットは、まさにブランドの創始者自身によって体現されました。彼らの生い立ちは全く異なっていたものの、ヘンリー・ロイス卿とチャールズ・スチュワート・ロールズ卿は共に、自らの境遇の制約に挑み、偉業を追い求めたのです。
ヘンリー・ロイスは、貧困や病苦、正式な教育の欠如を乗り越え、世界屈指のエンジニアとなり、メディアから「世界最高の自動車」をつくり出したと称賛され、その功績により最終的にナイトの称号を授与されました。一方、貴族の家に生まれ、ケンブリッジ大学で教育を受けたチャールズ・ロールズは、特権的な生活を送ることもできましたが、あえて黎明期のモーターレースや航空という危険と鍛錬を伴う道を選び、両分野のパイオニアとなりました。今日、彼らはともに「ディスラプター(破壊者)」と評され、常識にとらわれない挑戦によって世界を形作った先見者と評価されています。
自己表現と創造的な反抗精神は、その後のロールス・ロイスの歴史を通じて脈々と受け継がれてきました。それは、ブランドのもう一つの顔であるブラック・バッジにおいて、最も現代的で力強い表現で具現化されています。
初期の先例:1928年ロールス・ロイス 20 H.P. ブリュースター・ブロアム(BREWSTER BROUGHAM)
ロールス・ロイスのアーカイブのデジタル化が進む中、ブランドの歴史家たちは、ブラック・バッジの美学をほぼ一世紀前に先取りしていた大胆な仕様の一台を正式に記録しました。
1928年、ロールス・ロイス20 H.P. ブリュースター・ブロアムが納車された際、非常に珍しい仕様が施されていました。スピリット・オブ・エクスタシーとラジエーター・グリルが、従来の光沢金属ではなく黒で仕上げられていたのです。当時、磨き上げられたクロムは近代性と威信の象徴とされていたため、このような仕上げは極めて異例のものでした。しかし、オーナーはより暗く力強い表現を選択し、後にブラック・バッジを定義するコードをほぼ1世紀も前に先取りしていたのです。
このモデルは、ロールス・ロイス・オブ・アメリカ社の創設者であり資金提供者の一人であるJ・E・オルドレッドの依頼によるものでした。1920年代後半のニューヨークでの使用に合わせて設計され、大胆かつ先進的なデザインを通じて成功を表現する、新たな国際派の世代の趣向を反映していました。
その感性は自動車にとどまらず、オルドレッドは後にモントリオールに幾何学的形態と豊かでドラマチックな内装が特徴とする画期的なアール・デコ様式のアルドレッド・ビルも建設しました。彼がブラックのスピリット・オブ・エクスタシーとラジエーター・グリルを指定した決断は、この自信に満ちた都会的な美学と完全に一致しており、現在のブラック・バッジのコミッションにも影響を与え続けています。


真の表現としての第一歩:1964年ロールス・ロイス ファントムV
このより深みのある美学の要素を予見した先行の車種は存在したものの、ブラック・バッジの精神は、たった一台の特別な自動車にその起源を辿ることができます。1964年、ビートルズは「ハード・デイズ・ナイト(A Hard Day’s Night)』をリリースし、世界で最も有名なバンドとしての地位を確固たるものにしました。同年12月、ジョン・レノンはメイデンヘッドにR.S.ミードに新しいロールス・ロイス ファントムVを発注し、通常であればクロムやステンレススチールで仕上げられる部品も含め、内外装の全てを黒で統一するよう指定しました。コーチビルダーのミュリナー・パーク・ウォードによって製作された彼のファントムVは、バンパーやホイール・ディスクに至るまで深みのある黒の光沢仕上げで納車され、パンテオン・グリルとスピリット・オブ・エクスタシーのみがクロムのまま残されました。
この車には、リアドア、クォーターライト、バックライト、そして仕切り部分に暗色で反射するトリプレックス・ディープライト・ガラスが採用されていました。ジョン・レノンは1965年のローリング・ストーン誌のインタビューでその理由をこう語っています。「帰宅が遅くなる時のためさ。帰宅時に日が昇っていても、車内はまだ暗いままだ。窓を全て閉めれば、まだクラブにいるような感覚になるんだ」
インテリアは、リアスイートがブラックのベッドフォード・コード生地とナイロン製ラグで仕上げられ、フロントはブラック・レザーを採用、ラジオとペルディオ・ポルターマテレビ用の電動アンテナ、さらにブラックで統一された7点の特注ラゲッジ一式も備えていました。レコードプレーヤー、冷蔵庫、電話、さらには引き出し式ベッドの存在も伝えられていますが、これらは後付けの可能性があります。
この車両は、その反逆的な意図を妥協せず、唯一無二の存在であり続けており、現在ではブラック・バッジの精神的な源流と見なされています。
新たな世代
この美学がラグジュアリーにおける反逆の象徴として再登場するには、半世紀以上の歳月と技術革命を要しました。2010年代初頭、新たな世代の起業家たちがロールス・ロイスに注目し始めました。彼らは若くして成功を収め、新たな技術やプラットフォームを活用して産業を根本から変革しました。自らの影響力を臆することなく示し、卓越した職人技と妥協のない体験を求める一方で、その生き方や野心、そして大胆さを反映した躍動感と反骨精神を併せ持っていました。彼らの美意識は、新たなラグジュアリーのコードを形づくり、それはよりダークな美学、力強い個性、そして大胆なデザインを特徴とするものでした。
世界最高峰のラグジュアリーブランドとして、彼らは自然とロールス・ロイスに惹かれ、ブランドが誇る圧倒的なV12エンジン、威厳あるデザイン、比類なき素材の調和を称賛しました。しかし同時に、彼らが創りだす個人的な世界を反映する、より革新的でドラマチック、表現力豊かで、揺るぎない現代的なアプローチを求めました。
威厳あるオルターエゴ
この顧客層に正式に応えるための方針は、社内で慎重に議論されました。ロールス・ロイスブランドの中に、より大胆で革新的な表現を可能にする専用の領域を設ける必要がありました。それは、現代的かつクラシカルな伝統に根差し、世界的に評価されるブランドのアイデンティティと調和しながら共存できるものでなければなりませんでした。こうして誕生したのがブラック・バッジです。
これらのビスポーク・モデルは、鮮やかな新色や先進的な素材を取り入れ、よりパワフルで俊敏かつダイナミックな特性を持っています。これは自らハンドルを握りロールス・ロイスの力を操りたいと望むドライバーのために設計されており、運転手に任せることを前提としていません。この革新的な顧客層へのコミットメントを示すため、デザイナーたちは、ブランドの最も大切な象徴であるスピリット・オブ・エクスタシーのフィギュア、パンテオン・グリル、ダブル R の「バッジ・オブ・オナー」を黒で包み込みました。
ブラック・バッジのモデルには、独自のシンボルも与えられました。それは、数学の無限大記号であり、ロールス・ロイスの中に独自の世界が誕生したことを示すものです。この記号は、ブラック・バッジ仕様の V12 エンジンがもたらす果てしないパワーの奔流を想起させるものであり、1930年代にロールス・ロイス製のエンジンを搭載したボート、ブルーバード K3 で時速 130 マイルの水上速度記録を打ち立てたマルコム・キャンベル卿へのオマージュでもあります。彼もまた同じエンブレムを掲げ、同じ大胆不敵な精神を体現していました。

緻密に設計されたダークな美学
ロールス・ロイスのデザイナーは、ブランドの新しい大胆な表現を象徴するものとして、自動車業界で「最も深いブラック」のひとつを用いた独自の仕上げを追求しました。そのために、45kg( 100ポンド)の塗料を微細に噴霧し、静電気を帯びたボディ・イン・ホワイトに塗布した後、オーブンで乾燥させました。さらにクリアコートを2層重ね、4人の職人による手作業での磨きを経て、ブランドの象徴である高光沢のピアノフィニッシュが実現されました。
この工程は3時間から5時間を要するもので、量産車では全く前例のない手法でした。これにより比類なき深みと強列な輝きが生まれ、この深いブラックは、鮮やかでコントラストのある手描きコーチラインを引き立てる完璧なキャンバスとなっています。
ドラマチックなコーチワークに合わせて、ロールス・ロイスのデザイナー、エンジニア、職人たちからなるビスポーク・コレクティブが協力し、高度に研磨されたスピリット・オブ・エクスタシーやパンテオン・グリルといったブランドの象徴をブラックで表現するための新たな技術を開発しました。これらの象徴的なパーツは塗装ではなく、ステンレススチールの基材に従来のクロムメッキ工程で特殊なクロム電解液を導入することで、深みのあるブラック仕上げになっています。その厚さはわずか1ミクロンで、人間の髪の毛の約100分の1の薄さです。これらのパーツはすべて、車両に取り付けられる前に手作業で精密に研磨され、鏡面のように深いブラック・クロム仕上げが施されています。
特別にデザインされたブラック・バッジ・ホイールは、車両の存在感とスタンスを際立たせ、より力強いダイナミックな性格を演出します。これは、ブランドの象徴的なパワートレインの出力とトルクを向上させるビスポーク・エンジン・チューニングによって実現されました。この増強された性能を最大限に引き出すために、独自のトランスミッションとスロットルのキャリブレーションが導入され、シャシーは低く設定され、補強とわずかな剛性向上が図られました。さらに、ブラック・バッジの存在感を示す独自のエキゾースト・システムが装着されています。
すべてのロールス・ロイス車には、シフトレバーに「LOW」と控えめに刻まれたロー・モードが装備されており、必要に応じて低速ギアを維持することが可能です。ブラック・バッジの各モデルでは、この既存の制御が再調整され、さらに余裕のあるパワーを引き出せるようになっており、より力強い走りを引き出しながらも、ロールス・ロイスのエンジニアが常に大切にしている繊細さと熟慮を反映しています。
インテリアには、航空宇宙技術の世界から着想を得た新たな素材を取り入れ、ブラック・バッジのダイナミズムを反映しています。ロールス・ロイスの職人たちは、カーボン・ファイバーを機能性ではなく美しさの源として新たな視点で捉え、その精緻な織り模様を称えました。直径わずか0.014mmの細いアルミニウム糸と織り交ぜられ、6層のラッカーで仕上げられた後、72時間かけて硬化させ、手作業で深い光沢に磨き上げられています。
鏡面仕上げの金属表面も、ブラック・バッジの美学に合わせて深みのあるダークトーンに仕上げられています。ブランドの特徴的なアイボール・エアベントやビスポーク・オーディオのスピーカー・フレットなどのインテリアの金属部品には、物理蒸着法(PVD)と呼ばれる技術が用いられています。これは変色や劣化を防ぎ、長時間にわたり美しい状態を保つ金属着色技術の一つです。
お客様が初めてこの自動車を体験した際、その反応は非常に強く印象的なものでした。ロールス・ロイスは、妥協なき職人技を新しい大胆な新しい美学に適用することで、彼らが表現したいと望む精神を完璧に捉えていたのです。
ブラック・バッジの規範
ブラック・バッジの伝説は、2016年のジュネーブ・モーター・ショーでのレイスとゴーストのデビューにより確立されました。ブラック・バッジのダイナミックな志向性は、発表直後からすぐに裏づけられました。同年に開催されたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、レーシング・ドライバーのジャスティン・ロウが雨に濡れた丘をブラック・バッジ・レイスで駆け上がり、ロールス・ロイス車としては史上最速クラスのタイムを記録。週末のロードカー中トップ5に入る速さを見せ、専用設計のミッド・エンジン・スポーツカーを凌駕しました。これにより、ブラック・バッジが視覚的な迫力だけでなく、真のダイナミック性能も備えていることを証明したのです。
ゴーストとレイスに続き、2017年にドーン、2019年にはカリナンが登場しました。ブラック・バッジには特徴的なダーク仕上げで表現されますが、多くのお客様はブランドのオルターエゴを鮮やかで個性的な方法で際立たせることを選びました。彼らは、ロールス・ロイスの44,000色以上の既製のカラーパレットから選択するか、全く新しいビスポーク仕上げを創り出し、鮮やかなエクステリア・カラーをオーダーしました。インスピレーションの源には、オーストラリアのアマガエルを思わせる鮮やかなライムグリーンや、オヒア・レフアの花から着想を得た輝く赤、そしてエキゾチックな蝶、レトゥス・ペリアンダーに由来する深みのある虹色の紫などが含まれています。
ブラック・バッジの世界が広がるにつれ、それを取り巻く体験も豊かになっていきました。ブラック・バッジのオーナー体験は、クローズドの空港滑走路でのプライベートな夜間ドライブや、アンダーグラウンドな音楽会場の没入型イベント、ドラマチックでインダストリアルな環境で演出された高度に計画された納車式に至るまで、ブラック・バッジそのものの大胆で破壊的な精神を反映したイベントや瞬間を包含するようになりました。
こうした歩みは、極めて限定された秘密のモデルであるブラック・バッジ・スペクターの登場へと結実しました。スペクターの発表後、お客様からはそのブラック・バッジ版への強い期待が寄せられました。これを受け、ロールス・ロイスは正式発表となる2025年より前に、特別に製作されたこれらのモデルを一部の限られたお客様に先行して提供しました。ただし、その所有に関する情報を一切公にしないという厳格な条件付きであり、これはブランドの揺るぎない自信と、お客様の控えめで反骨的な精神を示す前例のない措置でした。ブラック・バッジ・スペクターに対する彼らの揺るぎない賛辞と、彼らのイメージに基づいて開発された大胆に仕あげられたこのモデルは、史上最もパワフルなロールス・ロイスであることの確固たる証明となりました。
10年にわたる影響力
誕生から10年、ブラック・バッジが想定した革新的なお客様たちは、ロールス・ロイスに惹かれた当初と同じ確信をもってビスポークに向き合ってきました。彼らは、ロールス・ロイスのデザイナー、エンジニア、そして職人たちと直接協働し、独自の美意識や審美眼をブラック・バッジのモデルへ反映させ、従来のラグジュアリーの枠をはるかに超える多様な影響を取り入れた、唯一無二のコミッションを創り出しています。その影響は、ヴィンテージのビデオゲーム文化やコレクション性の高いスニーカーから、グラフィティアート、陸上速度記録、著名なナイトクラブ、さらにはデジタル経済にまで多岐にわたります。
これらの画期的なビスポークの代表例には、ブラック・バッジ・アダマス(Black Badge Adamas・2018年)、ブラック・バッジ・ネオン・ナイトツ 三部作(Black Badge Neon Nights trilogy・2020年)、ブラック・バッジ・ランドスピード・コレクション(Black Badge Landspeed Collection・2021年)、ブラック・バッジ・レイス・ブラック・アロー(Black Badge Wraith Black Arrow・2023年)、ブラック・バッジ・カリナン・ブルー・シャドー・プライベート・コレクション(Black Badge Cullinan Blue Shadow Private Collection・2023年)、 ブラック・バッジ・ゴースト・エクリプシス・プライベート・コレクション(Black Badge Ghost Ékleipsis Private Collection・2023年)、そしてブラック・バッジ・ゴースト・ゲーマー(Black Badge Ghost Gamer・2025年)が挙げられます。この精神はブランドのコレクタブルにも広がっており、ミニチュア彫刻のカメオやラゲッジ・コレクションも同様の斬新なデザインで展開されています。
ブラック・バッジが次の10年を迎える中、その確立した美学はラグジュアリー業界全体に影響をもたらしています。世界中で、より個性的で表現力豊かなブラック・バッジの解釈に対する需要がますます高まっています。ロールス・ロイスは、独自の基準でラグジュアリーを追求し続ける人々に向けて、ブラック・バッジ体験をさらに深める多彩なポートフォリオを拡充していきます。



以上

