EVオーナーの満足度は向上するも、新政権下での規制とインセンティブの不確実性が課題
株式会社ジェイ・ディー・パワー ジャパンのプレスリリース
CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関であるJ.D. Power(本社:米国ミシガン州 トロイ)は、現地時間2月25に、2025 U.S. Electric Vehicle Experience(EVX) Ownership Study (2025年米国EVエクスペリエンス – オーナーシップ調査)の結果を発表した。
昨年は総合満足度が低下したが、本年調査ではプレミアムBEV、マスマーケットBEVの両セグメントで平均の総合満足度スコアが向上した。また、マスマーケットのバッテリー式電気自動車(BEV)市場に新しいモデルが投入されたこともあり、BEV市場シェアも 2023年の8.4%から2024年は9.1%に上昇している¹。
これは、トランプ新政権がEV税制優遇措置や公共充電インフラへの資金提供を廃止または削減する方向を示していることから、EVを取り巻く不確実性が高まっている中での出来事である。本年調査では、インフレ抑制法の改正により、連邦税額控除/還付を受けたと回答したEV所有者の数は2倍以上に増加し、BEV購入者の半数以上が、最も影響力のある購入動機の1つである税額控除を車両購入の理由として挙げている。この反動で、小売販売におけるEVのシェアが2025年は横ばいになると、J.D. Powerは予測している。
2025年調査の主なポイントは下記の通り:
顧客への情報提供はBEV所有体験を向上させる機会
オーナーに対して、購入プロセスの中で、ディーラーまたはメーカーのスタッフからEV所有に関する特定の情報提供があったかを尋ねたところ、初めてのBEV購入者の69%が車両購入時に何らかの情報提供を受けていた。しかし、その内容については、「特定の機能の使い方」に関する情報提供を受けたとする回答が46%と最も多く、「EVを所有する総コスト」に関する情報提供を受けたとする回答はわずか12%であった。初めてのEV購入者は最小限の情報提供しか受けておらず、所有体験を最適化するために必要な説明が十分に行われていない。この課題はすべてのブランドで見られている。
マスマーケットBEVの品質がプレミアムBEVを上回り続ける
昨年に続き、マスマーケットBEVのオーナーはプレミアムBEVのオーナーよりも不具合経験が少ないが、そのギャップは今年縮小している。本調査で不具合指摘数の少ないBEVモデルの上位10台中7台がマスマーケットセグメントに属している。プレミアム、マスマーケットのいずれのセグメントでも、不具合指摘が最も少ない2モデルが、総合品質で最も優れたモデルとなっており、車両の品質が総合的な所有者満足度に重要な影響を及ぼすことを示している。
プレミアムPHEVは有望な選択肢となりうる
前年までは、プラグイン・ハイブリット車(PHEV)の満足度はBEVよりも低い傾向であったが、今年新たに追加されたプレミアムPHEVセグメントの平均の総合満足度スコアは741で、マスマーケットBEVセグメント平均(725ポイント)やマスマーケットPHEVセグメント平均(632ポイント)を上回った。プレミアムBEVセグメントと比べても15ポイント低いだけであった。完全なEVへの切り替えに躊躇する顧客にとって、プレミアムPHEVは満足のいく選択肢となりうる。
公共充電に関する問題は依然として存在するが、マスマーケットBEVでの改善が見られる
公共充電の利用しやすさに関する満足度には、依然としてプレミアムBEVとマスマーケットBEVの間に大きなギャップがあるが、その差はこれまでで最も縮まっている。マスマーケットBEVにおいて、インフラの整備が進み、テスラのスーパーチャージャーの利用が進む中、前年比+86ポイントの満足度向上が見られた(396ポイント)。公共充電の利用しやすさに対する満足度が最も高いのは、プレミアムBEV(551ポイント)である。
BEVオーナーは次の車の購入においてもBEVを選ぶ意向が強い
94%のBEVオーナーが次の車の購入を検討する際に再びBEVを考慮するとしており、この割合は初めての購入者にも一致している。自動車メーカー各社は、強力な消費者のEVへのコミットメントに注目するべきであり、ポジティブな体験を提供できれば、ブランドへの忠誠心を持つ顧客を獲得する機会を生み出すことができる。実際、過去数年間、BEV再購入意向の割合は94~97%の間でほとんど変動していない。本年調査では、次回の購入時にエンジン車(ICE)を検討する可能性が高いBEVオーナーはわずか12%であることも確認された。本調査を実施してから5年が経ち、数千人のEVオーナーにアンケートを実施してきたが、一度EVを利用すると、消費者はこの技術に非常に高い確率でコミットすることが明らかになった。
J.D. パワー ジャパン 代表取締役社長 兼 オートモーティブ部門 部門長 山本浩二 のコメント
J.D. Power の Power Information Network (PIN) の年末小売販売データによると、 米国のBEV の市場シェアは 2023 年から0.7ポイント増加して2024 年には 9.1% となりました。控えめな増加幅ではあるものの、今までBEVのシェアを牽引していたプレミアムBEVだけでなく、マスマーケットBEV のシェアが前年の 1.8% から 2.9% に増加したことは、2024 年の EV 分野での明るい兆しとなりました。さらに、J.D. パワー 2024年米国EV検討意向調査℠によると、EV の購入検討率は安定しており、新車購入者の約4人に1人が EV の購入を「検討する(very likely)」と回答しています。
しかし、2025 年の残りの期間を考えると、EV の市場拡大には大きな不確実性があります。トランプ政権がEV税制優遇措置と公共充電インフラへの資金提供を廃止するのではないかとの憶測が現実のものとなれば、EV普及の2つの重要な課題である「公共充電の充足」と「車両価格」に影響を及ぼす可能性が高くなります。
このような状況を踏まえ、J.D. パワーは、今年のBEVのシェアは現状レベルに留まり、2026年に再び上昇し、2030年には26%に達すると予想しています。現状のEV市場に懐疑的な声が報道される中、J.D. パワーの異なる予想の背景には、当面の不確実性はリスクとしてあるものの、BEVユーザーの大半が次のモデルもBEVを購入検討することが過去5年の調査データで確認されており、将来に向けて BEVが確実に市場シェアを伸ばしていくだろうとの考えがあります。
J.D. パワー 2025年米国EVエクスペリエンス顧客満足度No.1を発表
総合満足度ランキングは下記の通り。
<プレミアムBEVセグメント>(ランキング対象8モデル)
第1位:BMW iX (790ポイント)※総合1位
第2位:BMW i4(783ポイント)
第3位:Rivian R1S(770ポイント)
<マスマーケットBEVセグメント>(ランキング対象12モデル)
第1位:Hyundai IONIQ 6(751ポイント)
第2位:Kia EV6(743ポイント)
第3位:Chevrolet Equinox EV(737ポイント)
※PHEVセグメントは弊社規定条件を満たさないため、ランキング非公表。
J.D. パワー 2025年米国EVエクスペリエンス(EVX) – オーナーシップ調査℠概要
2024年および2025年型車のバッテリー式電気自動車(BEV)またはプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)を購入したユーザーを対象に、EV所有に関する顧客体験を聴取し明らかにする調査。米国の主要なEVドライバーアプリメーカーであり調査会社でもあるPlugShare社と共同で実施し、今年で5回目となる。
■実施期間:2024年8月~12月
■調査対象:2024年および2025年型車のBEVまたはPHEVを購入したユーザー
■調査回答者数:6,164人
総合的な顧客満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を基に1,000ポイント満点で総合満足度スコアを算出。
顧客満足度を構成する10ファクターは下記の通り:
accuracy of stated battery range(航続可能距離表示の正確さ), availability of public charging stations(公共充電の利用のしやすさ), battery range(航続距離), cost of ownership(維持費), driving enjoyment(運転の楽しさ), ease of charging at home(自宅での充電のしやすさ), interior and exterior styling(内装/外観のスタイリング), safety and technology features(安全/先進機能), service experience(アフターサービス経験), vehicle quality and reliability (車の品質と信頼性)
*本報道資料は現地時間 2025年2月25日に米国で発表されたリリースを要約したものです。 原文リリースはこちら
*J.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したものです。
詳細は https://japan.jdpower.com/ja/our-benchmarking-study-methodology をご覧ください。
【ご注意】チャートやデータを記事に引用する場合には、 出典元として本調査名を明記してください。
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PlugShareについて:
カリフォルニア州エルセグンドに本拠地を置くPlugShareは、EVインフラストラクチャについて世界で最も包括的な調査を行っている企業である。同社が開発した世界で最も人気のあるEVドライバーアプリ「PlugShare」アプリは、iOS、AndroidおよびWebに対応しており、北米では多くのドライバーが使用、また世界中で700万人以上のEVドライバーが使用している。PlugShareは、EVに関する高度なデータツール、レポート、カスタムコンサルティング、包括的な調査を自動車メーカー、公共事業会社、充電ネットワーク会社、政府、およびその他のEV業界関係者に提供している。同社は、世界最大のEVドライバー調査パネルであるPlugInsightsを有しており、現在のメンバー数は150,000人以上を誇る。
J.D. パワーについて:
米国に本社を置くJ.D. パワーは自動車に関するデータと分析の国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。自動車業界及びその他の主要産業に、業界インテリジェンスや消費者インサイト、アドバイザリー、ソリューションを提供しています。
独自の広範なデータセットとソフトウェア機能を高度な分析および人工知能ツールと組み合わせて活用し、クライアントのビジネスパフォーマンスの最適化を支援しています。
J.D. パワーは 1968 年に設立され、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋にオフィスを構えています。事業内容の詳細については、https://japan.jdpower.com/jaをご覧ください。
¹ 引用:J.D. Power “Power Information Network (PIN)” 年末小売販売データより