IBM調査「2035年 自動車業界の将来展望 〜ソフトウェアが鍵を握る未来に向けて」を公開

自動車はAIを搭載し、ソフトウェアが創出する体験がブランド価値を高め、従来の自動車販売からデジタル収益を継続的に得るビジネスモデルへ移行

日本アイ・ビー・エム株式会社のプレスリリース

日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、IBM調査「2035年 自動車業界の将来展望」を公開しました。本調査の結果、経営層の 74% が、2035 年の自動車はソフトウェアで定義され、AI を搭載しているだろうと回答し、また、ソフトウェアと AI が車内の体験だけでなく、自動車の中核である車両制御やドライバーおよび車外とのインタラクションも作り込む大きな変革が起きることを予見して自らの未来を再定義しようとしているなど、自動車業界が大きな転換期にあることが明らかになりました。本調査は、今後10年間の自動車およびモビリティー業界の発展に関するデータ主導の分析であり、9カ国の自動車メーカーやサプライヤー、周辺産業など、自動車業界の経営層(1,230人)へのインタビューに基づいています。

「2035年 自動車業界の将来展望」ハイライト

今後10年間で、全世界で、新車の82%は電気自動車(EV)もしくはハイブリッド車、燃料電池車などの電動車になると予測しています。 

  • 調査対象となった自動車業界の経営層の74%が、2035年の自動車はソフトウェアで定義され、AIを搭載しているだろうと予測

  •  自動車業界の経営層の75%が、2035年までにソフトウェアで定義された体験がブランド価値の中核になると回答

  • 自動車業界は、従来の自動車販売というビジネスモデルを離れ、デジタル収益を継続的に得るビジネスモデルに移行を模索 

IBMの自動車業界担当ゼネラル・マネージャーであるジェフ・シュラゲター(Jeff Schlageter)は、次のように述べています。「自動車業界の大多数が、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)への移行を将来のブランド開発の鍵として挙げています。車両の価値は、もはや初期の特徴や機能に限定されるものではなく、ドライバー向けの新しいアプリケーションやサブスクリプション・ベースのサービスによって優れた顧客体験を継続的に提供することで、車両の寿命を通じて得られることが示唆されています」

さらに、自動車業界が、デジタル機能によって実現される、より深くパーソナライズされた顧客体験を提供する準備をしていることが浮き彫りになりました。現在、研究開発予算のうちソフトウェアとデジタル開発に割り当てられているのはわずか21%ですが、これを2035年までにほぼ3倍の58%に増やす予定であると経営層は回答しています。

また、SDV開発の大きな課題についても明らかになっています。従来の車両アーキテクチャーのアプローチでは、ブレーキなど単一領域のためのソフトウェアを、個々の電子制御ユニット(エレクトロニック・コントロール・ユニット:ECU)を通じて別の領域(エアバッグなど)と分けて提供していましたが、SDV時代においては、持続可能ではありません。

自動車が真のデジタル製品となる未来を実現するために、自動車メーカーは現在の電気/電子(E/E)アーキテクチャーおよびソフトウェア・アーキテクチャーを、シンプルなSDVアーキテクチャーに転換する必要があります。ハードウェア層とソフトウェア層を分離するという技術的な複雑さが最大の課題であるとみなされています。同様に、経営層の77%が、ソフトウェア開発のツールと方法論の不足に直面し、SDVの進化を阻む障壁だと回答しています。また、経営層の74%が、ハードウェア主導の文化が根強いことが、ソフトウェア主導の製品開発への切り替えを困難にしているとも回答しています。

ジェフ・シュラゲターは、次のように述べています。「クラウドと AI を組み合わせることで、自動車メーカーは新しいアイデアを探求し、さまざまなソフトウェア構成をテストし、革新的な SDV 機能の開発に役立つ貴重な知見を蓄積することができます。AIを使用して膨大な量のデータを分析し、パターンを特定し、予測を行うことで、 SDV 強化を加速し、顧客のためにパーソナライズされた体験を創出できます」

日本企業に関する考察

日本企業の経営層は、競争力の高さについての自負がある一方で、自動車がソフトウェア化する新しい時代においても競争優位を保ち続けられるかを追求する傾向が見られました。

10年後の自社の競合優位性の源泉として、日本企業は、組織のデジタル変革とイノベーションを生み出す力(それぞれ50%の経営層が指摘)をトップ項目として挙げました(グローバル全体では安全、信頼性、セキュリティ、プライバシー)。

また、2035年の自動車はソフトウェアで定義され、AIを搭載すると述べた日本企業は72%でした(グローバルは74%)。SDV推進の課題は、ソフトとハードを分離する技術課題が85%(グローバルは78%)、 コストが84%(グローバルは79 %)、ソフトウェア開発のツールと方法論の不足が84%(グローバルは77%)でした。SDV変革が予定通り進んでいると回答した日本企業は63%(グローバルは68%)でした。

ソフトウェアで実現する顧客体験は、自動車企業のビジネスモデルも変革していくと予想され、2035年には、デジタルとソフトウェア関連の売り上げが50%に達し、59%の開発予算がSDVに振り分けられると見込まれています。

本レポートの著者で、IBM Institute for Business Value 自動車業界担当グローバル・リサーチ・リーダーの鈴木 のり子は、次のように述べています。「日本の経営層は、安全、信頼へのコミットメントと車両制御は自動車会社のコアであり続ける、という点を強調していました。日本企業にとって、SDVへの移行は、これまで培ってきた日本車のブランド価値、すなわち安全や信頼性を維持しながら新しい顧客体験を提供していく、という舵取りが必要です。自動車の商品開発をソフトウェア主導に変革していく中、AIを活用することで、今後はソフトウェアの開発生産性を40%、商品価値も22%向上できると期待されています」

IBM調査「2035年 自動車業界の将来展望」は、2008年8月に発表された「2020年 自動車業界の将来展望」以降、自動車業界を縦断的に調査しているレポートの第4弾です。レポートの全文は、こちらから覧いただけます。

研究・調査方法

IBM Institute for Business Valueはオックスフォード・エコノミクス社(Oxford Economics)と共同で、9カ国の自動車業界の経営幹部1,230人を対象に、2024年第3四半期に調査を行いました。調査対象企業の内訳は、40%が大手自動車メーカーとEV企業、40%が自動車部品メーカー、20%がエコシステム参加企業です。 多様な形式(複数選択式、数値回答式、リッカート尺度)を用いて、電動化、SDVと自律走行車、コネクテッド・モビリティーが稼働する市場へと向かう業界の動きに関する自社の期待や成果、懸念および障壁など、さまざまな質問を行いました。

当報道資料は、2025年1月7日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳をもとにしています。原文はこちらを参照ください。

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