2025年2月現在、円安下で割安感が色濃くなった日本の中古バイクを海外バイヤーが高値で購入している。ロシアで人気の現行最新モデルでは新車価格を上回る値段で買取できる機種も出てきている
株式会社パッションのプレスリリース
2025年2月現在、円安下で世界的に見て割安感が色濃くなった日本の中古バイクを海外バイヤーが高値で購入している。海外で需要の高いバイクを保有しているオーナ様にとって絶好の売り時を迎えているのだが、現行の最新モデルの中には新車価格を上回る値段で売れる機種も出てきている。
新車より高額で取引されている中古バイクはどの国で最終的に消費されているのか?
大きく分けると『禁輸国で人気の車種』と、『国内需給で入手困難な車種』で新車の相場が爆騰しているのである。
以下表が、バイクパッション調べで買取率の高い現行バイクTOP 9である。
モデルイヤー |
新車価格 |
業者間での 平均取引額 |
新車比 |
|
2023年 |
315万円 |
360万円 |
45万円up |
|
2025年 |
303万円 |
347万円 |
44万円up |
|
2025年 |
155万円 |
196万円 |
41万円up |
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2024年 |
145.5万円 |
150万円 |
4.5万円up |
|
2023年~ |
122万円 |
126万円 |
4万円up |
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2024年 |
240.5万円 |
240万円 |
100% |
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2024年 |
256万円 |
258.5万円 |
99% |
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2023年~ |
190万円 |
196万円 |
97% |
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2023年~ |
170万円 |
176万円 |
97% |
※金額は全て税抜き価格
※各機種の希望小売価格はベースグレードのベースカラーを採用
※平均落札額は業者間オークションのデータを2025年2月時点で12か月間遡った金額
※対象機種は
(1)業者間オークションで直近1年の平均取引額が100万円以上であった現行85機種を選出し
(2)モデルイヤーについては3台以上の取引記録がある年式のみを対象にして最も高年式なモデルを選別した(2025年モデルが1台で2024年モデルの取引履歴が3台の場合は2024年モデルの数字とした)
上記表については少々補足が必要であろう。
新車価格や対象機種の選別は上記注釈の通りなのだが、業者間の取引額とは何であろう?
業者間の取引額は、年間に約20万台のバイクが取引される(買取業者最大の転売先にして販売業者最大の仕入れ先となっている)業者間オークションでの落札額である。
従って上記表の参考平均買取率は「業者間の平均取引額÷新車価格」で算出しているが、「業者間の平均取引額=買取業者の転売額」であることから査定現場での買取率は(転売額から出品手数料や陸送費と儲けを差し引く 必要から)数%低くなる点にはご留意頂きたい。
さてTOP 5までは参考平均買取率が100%を超える結果となった。
業界では最新イヤーモデルの数字は66%が1つの指標となっており、コロナ禍が終息した2025年現在では100%超えは目を瞠る数字だ。
それでは以下、第1位~3位の機種を対象にして、なぜ100%超えの買取率となっているのか掘り下げていこう。
第1位 ゴールドウイングツアー2023年モデル
平均参考買取率114%|新車価格比45万円up
第1位は、ゴールドウイングツアーの現行2023年モデル。 1975年発売のGL1000からHONDAのフラッグシップで有り続けるゴールドウイング。2018年のフルモデルチェンジで6世代目SC79型GL1800へと進化を果たし、現行2023年モデルではリアトランクとDCTを標準装備した それまでの最上位グレード「ゴールドウイングツアー」に国内モデルは一本化された。
国内向けの生産販売計画は400台。希望小売価格は税抜315万円が設定されたが、 平均参考買取率は118%で、新車価格比で平均45万円アップとなっている。
上記写真は、弊社バイクパッションで340万円で買取したゴールドウイングツアー(2023年モデル・走行距離1,000km超)だが、新車時のメーカー希望小売価格は315万円(金額はすべて税抜)であったから、お客様は新車比で25万円高く売れた計算だ。
これを弊社横浜店(単店舗ベースでは日本最大級の販売数を誇る)で再販すると、乗出し価格は諸費用+納車整備費用+儲け+消費税が加わり約400万円になり、とても売れそうにない。という訳で業者間オークションを通じて売却することになるのだが。
では誰が国内の新車価格以上で購入しているのか?
その多くは業者間オークションにおいて落札の4割を占める海外勢である。
ご存知の通り円安が進行していることで日本の物価は海外勢にとって魅力的となっている。
具体的には、北米の現行GOLD WING TOURの税抜メーカー希望小売価格は28,700$であり155円換算で約450万円(売上税込み480万円)である。 仮に業者間オークションにおいて360万円で仕入れると日本の消費税10%に輸入関税2.4%や輸送費が加わり、北米での2023年モデルの中古平均価格25,000$(約390万円)に対して競争力がない。 HONDAがGOLD WINGを正規販売している国では360万円の仕入れ値は為替差益を考慮しても割に合わない。
誰が購入しているのか?その答えは海外バイヤーの中でもとりわけ中東のバイヤーが主流であり、ドバイを経由して、最終的には禁輸措置が講じられているロシアやイランなどで消費されているケースが多い。 (最終消費値については複数の貿易業者から直接聞いた話である)。
以上が、現行ゴールドウイングの相場高騰の背景となっている。現地のブルジョア層にとって二輪最大メーカーのフラッグシップ「最新ゴールドウイング」は需要の高いモデルなのであろう。
2023年モデルでは3タイプのカラーリングが設定されているが、最も相場が高いのが僅差ながらパールグレアホワイトである。
業者間の平均落札額(買取業者の平均転売額)は360万円であるが、実際の買取査定額も360万円付近になるかは注意が必要だ。
その理由だが、取引された72台のうち最良のコンディションを誇った走行0kmの未使用車の落札額が345万円であった事実が示すように、345万円以上で落札された62台については コンディションと落札額の有意な相関性は無く、毎週2回開催されるオークション開催日の需給によって値段が変動しているためだ。 どれだけコンディションが良くても340万円以上の買取査定額を提示することは買取業者にとっては赤字リスクを背負う覚悟を伴うため、なかなか賭けに出られないのが実情だ。
事実弊社バイクパッションでも走行1千kmの2023年モデルを340万円で買取しているが、340万円が相場的に限界と判断してのことだった。
第2位 R1300GSアドベンチャー 2025年モデル
平均参考買取率114%|新車価格比44万円up
第2位は元祖アドベンチャー機BMW GSシリーズの現行モデルR1300GSアドベンチャー。
Triumphのタイガーシリーズ、ホンダのアフリカツイン、ヤマハのテネレ、Kawasakiのヴェルシス、SUZUKIのV-Strormの他、DUCATIのセールスの屋台骨に成長したムルティストラーダシリーズ、 ハーレーも2021年のパンアメリカ/スペシャルで参入するなど、世界的に成長著しいアドベンチャー機市場において「いつかはGS」の言葉が示すように最高峰のステータス機となっているのが本機である。
平均参考買取率は114%とゴールドウイングツアーと同率ながら、新車価格比の平均アップ額が44万円となり僅差で第2位となっている。
2025年モデルの日米間の希望小売価格の差は円換算で約60万円。 輸入バイクの関税がかからない国内要因に円安要因も加わって、世界を俯瞰してもの割安感が際立っている日本市場のメーカー希望小売価格。ゴールドウイングツアーと同様に、海外のバイヤーが業者間オークションで積極的に入札していることが中古相場高騰の背景となっている。
仮に業者間の平均落札額で347万円仕入れたとすると、日本の消費税10%を加えた381万円の時点で既に欧州や北米での中古小売価格として競争力が無い。本機もGOLD WING同様に最終消費値はロシアやイラクが主流となっている。
彼の地で富裕層に需要の高い最新モデルだけに付くプレミアム相場となっている。
業者間で取引された3台は全て走行距離数kmの未使用に近い個体であり、上位2台は新車価格が9.2万円高いブルー・メタリックの個体である点には注意が必要だ。 ブール―の未使用に近い個体であれば査定現場での買取額は350円付近は見込めるであろう。ブルーのみに設定されているGSスポーツTypeや、より上位のカラーに設定されているブラックやグリーンであれば更に査定額が伸びる可能性がある。
ただし近年は、BMWに限らず海外メーカーが為替調整で特に日本向けの価格を年々上げており、高額査定が望めるのは国内の希望小売価格が相対的に割安な今が絶好の売り時となっている。
第3位 Z900RS SE 2025年モデル
第3位 Z900RS SE 2025年モデル
平均参考買取率126%|新車価格比41万円up
第3位は、大型バイクの国内販売数 首位の座を登場2018年モデルから維持しているZ900RSの上位グレード「Z900RS SE」
人気の理由は、プレミアムの付く旧車の代名詞となっている空冷4発Zシリーズの1号機にしてKawasaki初の世界最速機 Z1を現在の技術でオマージュしたルックスとストーリー性にあるが、 中古相場が高騰している最大の理由は新車の入手が困難となっている点が大きい。
需給が逼迫し現行の新車価格を上回る中古車が珍しくなかったコロナバブルのピーク2021年には、その筆頭格に挙げられたZ900RS。
新車供給の回復に伴って2022年以降は軒並み正常な中古価格水準に収斂されていった現行機だが、Z900RS SEは例外であった。 登場2022年モデルは抽選倍率が3桁を超える等、買いたくても買えない最も入手の難しい新車となり、新車比で1.5倍の値札を付ける中古車が当たり前のように陳列されていた。
2025年1月現在ではディーラーに数カ月単位で定期的に入荷するようになり、Z1カラーから一線を画した2025年のブラックカラーが登場したこともあり、抽選倍率は10倍程にまで落ち着いてる。 しかしながら依然として入手が困難であることに変わりはなく、現在も新車価格を超える中古車が常態化していることが相場高騰の理由だ。
上段の通り、業者間オークションの平均落札額は196万円となっており、走行距離数十km未満で未使用に近いコンディションであれば税抜新車価格よりも10万円は高く売れる相場となっている。
第1位のゴールドウイングと異なり最終消費地が日本である事から、国内での消費者に近い販路を持っている買取業者を選ぶことで更なる買取額アップに繋がりやすい。 もちろん、単店舗ベースで日本最大級の販売数を誇るバイクパッション横浜店では販売店仕入れ価格として更なる高額買取が可能でる点も付け加えさせて頂く。
▼本稿の記事で使用している相場データについて
・中古バイクの相場に関わる基礎データは、業者間オークション運営最大手の取引データ(10年間で約156万件に及ぶ取引履歴)を使用している。基礎データを元に調査分析を調査分析を行ったのが、記事を執筆している(株)バイクパッションで各種グラフは弊社で作成したものである。
・オートバイの新車価格等に関わるデータは各メーカーの公式サイトやカタログを元に、(株)パッションが調査分析したものである。
▼オリジナル記事とこの記事の参考リンク