EV普及、自動車関連企業の約5割で「マイナス」市場の変化に対応、4割超がEV参入の意向 

TDBのプレスリリース

帝国データバンクがまとめた「EV普及の影響/参入企業の実態調査(2023年)」(2023年8月24日発表)によると、企業におけるEV(電気自動車)の普及による「プラスの影響」「マイナスの影響」はともに約1割強だった。一方で、「影響はない」と「分からない」の合計が 7 割超にのぼり、実感の乏しい状況がうかがえた。

またEV事業への参入について、全体の 1 割が『参入済みもしくは参入予定』であることが判明。本レポートでは、そのなかでも特にEVに直接関係する「自動車関連」業種 に着目し、EVの普及による影響およびEV事業への参入状況について取りまとめた。

<調査結果(要旨)>

  1. 「自動車関連」業種ではEV普及により約5割の企業が「マイナスの影響」

  2. 「自動車関連」業種では、4割超の企業がEV事業に参入済み/予定

※調査期間は2023年7月18日~31日、調査対象は2万7,768社で、有効回答企業は1万1,265社(回答率40.6%)。分析対象は「自動車関連」業種に属する企業315社。

※調査機関:株式会社帝国データバンク

「自動車関連」業種ではEV普及により約5割の企業が「マイナスの影響」

EVの普及による「自動車関連」業種への影響について、「プラスの影響」とした企業の割合は前回調査(2022年7月)比2.2ポイント減の14.3%だった。一方で、「マイナスの影響」は同2.7ポイント増の49.2%と全体の半数を占め、「プラスの影響」を34.9ポイント上回った。

全業種の割合に比べ、「自動車関連」業種における「マイナスの影響」の割合は35.6ポイント高かった。また、「影響はない」は同27.0ポイント低くなっており、EVシフトによる影響は基幹部品がエンジン(内燃機関)から電気機器へと変わっていく「自動車関連」業種で鮮明に表れている様子がうかがえた。

「自動車関連」業種では、4割超の企業がEV事業に参入済み/予定

「自動車関連」業種におけるEV事業への参入について、日本のカーボンニュートラル宣言前である「3年以上前から該当する事業あり」が15.6%、「3年以内に新規事業として参入済み」が6.3%、「参入予定あり」が22.2%だった。

合計すると『参入済みもしくは参入予定』の企業は44.1%(全業種比+34.1ポイント)となり、4割超の企業が何らかのかたちでEV市場に関わっていく意向を持っている。一方で、「参入予定なし」は30.8%(同▲36.6ポイント)だった。

『参入済みもしくは参入予定』の割合を業界別にみると、自動車小売などを含む『自動車関連小売』は55.0%と突出して高かった。自動車部品卸売などの『自動車関連卸売』(43.2%)および自動車部品製造などを含む『自動車関連製造』(41.6%)が4割台で続いた。

EVの普及により従来のサプライチェーンの再構築が避けられないなか、今回の調査で、自動車部品メーカーなどの川上から川下の小売業や整備業まで、多くの企業でマイナスの影響があることが明らかになった。一方で、バッテリーやモーターなど需要が増加する部品もあり、充電ステーションなど新たなサービスの誕生もあってビジネスチャンスは広がっている。こうした状況下、2022年より「事業再構築補助金」制度にEV関連事業への展開なども含まれる「グリーン成長枠」が新設されたほか、需要の減少が見込まれる自動車部品関連企業を支援する「ミカタプロジェクト」が本格始動されるなど、国による支援策が増えてきている。

このようななか、欧州連合(EU)は2023年3月、2035年にエンジン車の新車販売を全面禁止する方針を変更し、環境に優しい「合成燃料(eフューエル)」使用のエンジン車を容認することで合意したほか、イギリス政府は同年9月にガソリン車などの新車販売を禁止する期限を2030年から2035年に延期すると発表した。

こうしたEVシフトをけん引してきた欧州における戦略の転換・見直しは、EV一辺倒ではなく多様な選択肢で車の脱炭素化を進めている日本にとっては追い風となろう。今後も日本の強みと産業基盤を活かしながら技術イノベーションを起こして脱炭素化に貢献する車を追求するとともに、比較的高額な車両価格・維持費や、充電インフラの不足などといった電動車の課題解決に向けた取り組みの実施が肝要といえる。

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