<台湾EV産業特集>第1回 三度目の正直?「国の総力を結集した台湾自動車産業の発展計画」/ワイズリサーチの最新業界レポートを公開

威志企管顧問股イ分有限公司(ワイズコンサルティンググループ)のプレスリリース

ワイズコンサルティング グループ(本社:中華民国台北市、代表取締役:吉本康志)のワイズリサーチは台湾EV産業特集を公開しました。本特集では、4回に分けて台湾自動車産業発展の歩みと今後の展望について紹介していきます。

台湾EV産業特集
  • 【第1回】三度目の正直?「国の総力を結集した 、台湾自動車産業の発展計画」

 2022年、台湾国内向けの自動車販売台数は合計42万台であり、そのうち22.5万台が台湾で生産された車両で、残りの19.5万台は輸入車であった。台湾で生産販売する自動車メーカーの市場シェアに着目すると、TOYOTAを生産する国瑞汽車(Kuozui)が43%を占め、MITSUBISHIを生産する中華汽車(CMC)が17%、そしてHONDAを生産する台湾本田が12%のシェアを獲得している。また、輸入車の市場においては、欧米系高級車の他に、日系のTOYOTA、LEXUS、MAZDAが主要なシェアを占めている(図1)。

 台湾政府は、1950年代から自動車産業の発展に力を注いできた。海外自動車メーカーと技術提携をするため、台湾で生産投資をする企業に対して優遇措置や補助政策を提供した。また、2002年にWTOに加盟したことで、グローバル市場とのつながりを強化するために輸入車の関税を30%から17.5%に引き下げた。このような経緯から、日本企業が台湾で自動車を生産販売することが主流となり、欧米系輸入車のシェアも拡大し続けたことで、台湾ブランドの自動車は発展することができず、海外ブランドの車両組立や自動車部品の受託製造に留まってしまった。
 台湾政府は自国の自動車産業を扶植したく過去に様々な政策を打ってきたが、その結果はどうだったのか。本特集では、台湾自動車産業発展の歩みと今後の展望について紹介していく。

一度目の挑戦、海外自動車ブランドの組み立て工場に留まった
 台湾経済部工業局は1985年に「自動車工業発展プラン」を公布し、自動車部品および完成車業界の競争力向上を促すべく、台湾で独自に設計した車体、シャシー、エンジンを生産する企業に対し、3%の貨物税(物品税)補助を支給すると発表した。こういった政策を受けて海外の大手自動車メーカーは台湾にR&Dセンターを設置するようになり、新型車に台湾独自の改造を加えて付加価値を高めるとともに開発力を蓄積していった。

 裕隆汽車(ユーロン・モーター)は1981年に設立した工程センターを日産自動車の海外R&D拠点となる「アジア技術センター(YATC)」に昇格させ、「セントラ」や「セフィーロ」といった台湾モデルの設計・開発を手がけた。また中華汽車(CMC)、福特六和汽車(FORD)、国瑞汽車(TOYOTA)も相次いでR&Dセンターを設置し、▽三菱バリカ(CMC)▽フォード・モンデオM2000(FORD)▽トヨタコロナ・プレミオシーリズ(国瑞)、といった台湾仕様車を開発した。

 設計・開発の台湾現地化が進んだこと、および車両研究測試中心(ARTC)の検査体制にけん引される形で、板金部品、プラスチック部品、電機・電子部品といった協力メーカーを含めた台湾自動車業界全体の開発能力が向上した。各自動車メーカーがR&Dセンターを設立して自主開発を進めた結果、完成車、部品を含む台湾自動車産業の生産額と就業率は相次いで最高を更新した。台湾生産の国内販売台数は2005年に44万台に達した。しかし、輸入車関税率の低下とともに台湾生産車のシェアも低下していることがうかがえる。台湾の自動車産業は優れた分業体制と製造力を有しながら、海外市場で勢力を拡大することは難しく、世界大手自動車の受託生産業務を請け負うにとどまり、展開も小規模な国内市場に限られ、技術と利益を掌握する状態にできなかった。
 その根本的な原因は台湾の自動車産業が真のブランドを有しておらず、独力で製品を生み出していないことにあった。

次回は、台湾自動車産業の「二度目の挑戦」について、政府と企業はどのような努力をしてきたかを紹介する。

・執筆者紹介
ワイズリサーチ マネージャー 段婉婷

持ち前の明るく頼れる性格で社内外で前向きなリーダーシップに定評がある。業界・マーケット調査、消費者調査の豊富な経験を有する他、社員研修の講師としても活躍中。ISO27001審査員資格を保有し、クライアントの情報セキュリティ課題もサポート可能。

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